住友銀行から大阪の中小銀行である関西銀行に頭取として赴任した伊藤忠彦さんの物語。
関西銀行(現・関西アーバン銀行)は、親銀行から多額の増資を受け、なんとか生きていける
というギリギリの状態から全国でもトップクラスの業績をあげる元気な銀行へ変貌をとげた。
その秘密は、伊藤頭取の脱「常識」経営にあった、という内容だ。
その具体的な中身は、
「業容拡大のために、むしろ営業担当者を削減」「100以上のプロジェクトを連続で立ち上げる」「不況期に、あえて店舗をリニユーアルし、立地を裏通りから表通りへ」
などなどがあげられる。
しかしながら、全体を通して感じたのは、こうした表面的なことではなく、
この人は、実に主体的にことにあたったのだな、ということだ。
親会社から子会社の社長になっている人は、何百人、いや過去を振り返れば数千人いるだろう。そのような人が、伊藤さんのように主体的に想い、考え、行動することができれば、日本のビジネス界は現在とは全く違った様相を呈していることだろう。
往々にして、子会社の社長や役員になった人は、左遷だとか最後のご奉公などという
消極的な捉え方をする人が多い気がする。それでは、意味がないのだ。
臨済禅師の「随所に主となれば、立つ処皆真なり」は、座右の銘だが、実践例を見た思いがした。
関西金融情勢の変化や関西アーバン銀行の成立の過程といった、
過去10年の関西金融史について、わかりやすく解説されている。
また、著者の取材力の高さから、関西アーバン銀行内部の様子も、
手触り感のある書き方がされている。
ただ、多少の要望(物足りなさ)を申し上げるとすれば、関西アーバン
急成長の本質的背景について、もう少し丹念に炙り出して
ほしかった。
合併した、組織を変えた、店舗をどうした、という話は、
他の銀行でもみられること。それだけで地域銀行の急成長が
遂げられるのだろうか・・・。急成長は、ただ順風満帆の成長なのか???
著者は関西の金融情勢に大変
精通しておられるようなので、今後の調査・分析に期待したい。